福祉=みんなの幸せ。
デジタルな福祉器具を使って
子どもや障害者がよりアクティブになれる社会をつくりたい。
デジタル福祉器具を企業のスポンサー(広告)で広げていくことで
福祉のお金の流れを変えていく。
NPO法人デジタルウェルネス代表 小峯啓友
Profile
NPO法人デジタルウェルネス
2016年に設立されたNPO法人。
福祉用具がコミュニケーションツールとして、よりアクティブに活用されみんながワクワクできる社会を創造します。これまでには次世代型電導車椅子「WHILL」と「Pokemon GO」を組み合わせたユニバーサルアクティビティ「WHILL DE GET」などを実施。デジタル福祉器具を企業のスポンサードで広めていく。
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デジタルウェルネスが生まれるまでの物語
福祉という業界に入ったきっかけなんですけど。
ぼくずっとお笑い芸人になりたかったんですよ。
高校3年生の時に、人力舎の養成所に行きたくて。
他の家族は背中を押してくれたんですけど、母親だけは
面白いやつが集まってる中で1番を目指すのは難しいんじゃないの?って。
母なりの分析では、ぼくの笑いは同級生だけで盛り上がるような内輪ネタでなくて、幅の広い笑いだからそういうのを求められる職場ってあるんじゃないの?と。
そこで老人ホームとか介護の職場を紹介されて、初めて福祉に興味を持ちました。
さらに実際に大学で高齢者介護を学びつつ、並行して前説とかM1とか出たりお笑いの活動も続けていました。
ただ実際にOB訪問に行くと、福祉の業界は給料も安いしやっていくには大変なことがわかって。
そのときたまたま福祉用具の企業の方に出会って実際に体験したら「こっちの方がより多くの人を救えるかな」と感じたんですね。老人ホームだとMAXで100人くらいの人数なんですが、福祉用具なら何千何万人も救えると思い、商社に入りました。
その会社で10年以上法人営業を担当していました。
提案すれば物が売れるし、実際うまくいってたんですよね。
でもなんていうか、じゃぁ自分が実際に年を迎えた時に老人ホームに入りたいか?っていうと入りたくないですし、福祉の現場に閉塞感を感じていたんです。
施設の生活ってずっと自由時間みたいなもんなんですよ。
みんなやることないから、テレビを見たりカラオケしたりしてるんですけど、「それ楽しいのかなぁ」ってずっと疑問に思っていて。
ぼくはもともとずっとフェスに行ってたので、うちの会社が音頭をとってもっとフェスみたいにしたらどうかなと考えました。
せっかく歌うんならステージに立って、衣装もつくって、フェスみたいに目的をもってやったほうが面白いんじゃないかと。
実際フェスを企画すると、合計300人くらい参加して楽しんでいただけました。
フェスもそうですけど、ぼく自身ユーモアをすごく大切にしていて。
学校でも通知表に「ユーモア」って書かれたいがために、間違っているのを知っていながら間違った答えを言って、みんなの反応を見たりとか。
そうやって人生やってると、人と違うことをするのがだんだん快感になってくるんですよね。
そしてどんどん尖りまくっちゃって、働いていた会社が窮屈になっちゃって。
今まで自分が思っていた疑問をぶつけてみようと4月に起業しました。とりあえず始めてみないとわからないから。
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フェスの価値とはなんでしょうか?
ーー一般的にはフェスって音楽があって飲食ブースがあって大きなステージで行われるパフォーマンスを見るっていうようなイメージがあると思うんですけど。
我々の中では何か意図や目的があり集まった現象のことをそう呼びたいと考えているので、「WHILL DE GET」も立派なフェスだと思うんですね。
こういったグッドデザインな社会的エンターテイメントは世の中にたくさんあるんですけど、ひとまとめにする記号がないので、我々はそれを「ソーシャルフェス」という名前でまとめています。小峯さんは沢山フェスに行かれてると思うのですが、単刀直入にフェスの価値とはなんでしょうか?
ぼくの中でフェスっていったら「混ざる」ってことなんですよ。
フェスには自分とは価値観の異なる人が不特定多数いて、その中で予期せぬ出来事が起こる瞬間を沢山見てきました。
なんでこの瞬間肩を組むんだろうとか、なんで誰かが落とし物をした時にみんなで探し始めるんだろうとか。
一人だったら普段無視するような出来事も、価値観が共鳴して集団で行動になっていくんです。
人種や年齢を超えて価値観が混ざり合う場がぼくの中ではフェスですね。
―― 確かに、ライブ中に誰かの靴紐がほどけてしゃがむと、みんながそれを守るようにガードすることとかありますよね。
それって、そのまま無視してライブに熱狂することも選択肢としてはあるのに、それが当たり前に起こるってことは、それが「いいこと」だと皆わかっているんですよね。それって1人だと少し勇気がいることだけど、その空間のなかでは一歩が早いのは実感します。
自分にはない価値観とはいったけど、奥底まで紐解くと「共通善」ていうんですか。
みんなが等しく「それはよいよね」って感覚で持ってるものがあって、それに触れるということなのかなぁと。
そこに音楽っていうものがあって、周りの人の声が聞こえないくらい音楽がドーンって入ってくると、うるさいんだけど、代わりに自分と向き合う時間が生まれるんですよ。そこで普段フィルターがかかってる共通善を解放していけるのかなぁと思います。
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コミットするSDGsを教えてください!
3.すべての人に健康と福祉を
福祉というものはみんなの幸せと捉えています。
しかしパブリックなサービスというのは狭い範囲でしかカバーされていなくて、その間にいる人たちはサポートされていないんです。
「WHILL DE GET」の際も障がい者の女性の方がいらしたんですよ。
その方は特定難病疾患みたいなものに登録はされているんですけど障がい者手帳は所得できないようで、制度の狭間で全くサービスが受けられない。
どんな病気かというと、何かものに触れるたびに針で刺されたような痛みをずっと感じるんですね。だから外にもでれないし、ずっと家のなかで寝ているんですよ。
でも体調の変動もあるらしく、調子のいい時は外に出られるみたいで、たまたま今回来てくれたんですね。WHILLも障がい者手帳があると半額くらいになるんですけど、その人は全額負担なんですよね。
それってそもそも安くするとかその前に社会インフラとして整備するべきものではないのかなぁと。
費用も公費ではなくて企業広告を絡めてマネタイズしていけばもっと予算に空きがでるはずで、そうすればもっと狭間にいる人たちを助けられないかなと思うんです。
この3番を選んだ思いとしてはそういう制度の狭間にいるような人たちへの想いが強いですね。
――どうして彼女は障がい者手帳の給付を受けられないのでしょうか?
彼女が言うにはですけど、数の問題みたいです。
その病気って日本に200人くらいしかいないんですって。個別性が強いんですよね。
そうなると少数の疾患の人たちのために行政コストを割くっていうのは、経済合理性から言えばノーグッドなわけなんですよ。
それが本当に正しいかどうかは分からないけど、それを利益目的の企業に当てはめてみると、当然市場が大きいビジネスの方に展開するわけで、その考え方って確かに分かっちゃうわけなんですよね。
ただ当事者がそう思ってしまっていることを理解しないといけない。
本当はそうじゃないかもしれないけど、本人がそう感じてしまっているんだからそういうエッセンスがどこかにあるんだろうなぁと、課題を感じます。
小峯さんが提案する
SDGs3に今すぐぼくらができる3つのアクション
①福祉用具を物質として捉えること
車いすではなく、移動を便利にするモビリティとか街中でも目立つことができるコンテンツと捉える。
メガネを視力の補正ではなく、
ランドセルも小学生限定とは考えずに、
ヒトは使う前からイメージがセットされているので、
基本的に自分の生活がどうアップするか(=自分視点)で捉えて欲しいと思っています。
②仲間をつくること
①のように考えられる仲間を少しずつ増やしていくことですね。
①のような考え方はまだまだ理解されておらず少数派の意見だと思います。
なので楽しめる仲間を増やさないとバーンアウトしちゃいますね。
③楽しみながら使ってみる、カスタマイズしてみる
実際に仲間と企画して、
楽しみながら使うのですが、
不満が蓄積されると、やがて不満が外に吐き出されます。
そうすると、まちのあり方や人々の価値観が変わり、福祉本来の”