この世界には聴こえない音と、聴こえる音がある。
人間の最大可聴領域は20Hz~20,000Hzほど
犬は40~65,000Hzほど、イルカは150Hz~150,000Hzほど
可聴領域には個人差があり、難聴と呼ばれる人たちがいるが
そもそも人間は世界に対して等しく難聴だ。
一説によると生きている人間と死んでいる人間の違いは
周波数の違いでしかないらしい。感じ得ない周波帯への変化を死と呼ぶ。
聴こえない音を聴こうとサイエンスはひた走る
その一方で聴こえる音を誰にでも聴こえやすくする開発も進む。
それを補聴器、ではなくスピーカーとして製品化し音の明瞭度と指向性を高めることで
補聴器なしでも聴こえやすい音を実現した「SONORITY」というスピーカーとの出会いが
「Sooo Sound Festival」開催のはじまりだった。
(Made by ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社)
量子力学をコンセプトにした「Quantum」や
土の声を聴く「Mud Land」というフェスなど
私はこれまで様々なフェスティバルを手がけるなかで
聴こえない音を聴こうとする挑戦をしてきた。
ただその一方で誰にでも聴こえやすい音を実現できずにいる
もどかしさをずっと抱えていて、このサウンドシステムに辿り着いた。
前述にもあるが「SONORITY」というスピーカーは
音の明瞭度をあげることで聴こえを実現するシステムで
伝音性難聴、感音性難聴のどちらにも効果があるとされていた。
これの価値を最大化したフェスをつくるため3つのことをまず決めた。
・都市のど真ん中
・参加無料
・福祉イベントとしない
「場」「金」「人」すべてのパブリック化を試みた。
あわよくば、ふらっと買い物に来た難聴の方の耳に突如音が聴こえ始め
そのまま参加無料でフェスに参加し、あたかも障害なんて始めからなかったように
みんなで踊る、そんな淡い夢を描きながら2017年10月21日、国際反戦の日
横浜はみなとみらい「クイーンズパーク」にて初開催に至った。
《出演アーティスト》
Lucy Gallant(from UK)
KENTA HAYASHI
Milltea
Keizo Machine!(HIFANA)
Sync Kudo(from SAIHATE)
ノースポンサードで予算も全くないフェスに
世界的なアーティストたちが集結してくれた。
このフェスをつくるにいたった経緯に共感していただき
このフェスがつくれるかもしれない未来にワクワクしていただき
そして当日は、本当に最高のパフォーマンスをしてくれた。
世界最大規模のフェス『グラストンベリーフェスティバル』や、 オーストラリア最大のフェス『バイロン・ベイ・ブルースフェスト』に何度も出演しオーディエンスを魅了してきたLucyがオープニングに出演。地球と調和するような歌声が本当に魅力的。
転換中には「フェスティバル未来会議」と題して、NUVILLAGEの奈良さん、蓮祭りのさとうゆきのさん、RAKUENの工藤真工さんと共に
フェスとはそもそもなんだ?ということからこれから向かっていく未来についてゆるく楽しくお話。
雨が滴るなか、ワールドツアーから来日公演中のKENTA HAYASHIの演奏も始まる。444kHzでチューニングしたサイケデリックで優しいサウンドが、異空間へ誘っていく。
今回ソーサウンドフェスティバルを無料開催するために実施したクラウドファンディングに
支援していただいたSugar soulさんに急遽ステージにあがっていただき、応援のメッセージと
「garden」が鳴り響く。この曲はゴスペルのつもりでつくったって話されていて、歌詞の1つ1つに触れていくと
本当、救われるようだった。
夜は深まり、みなとみらいは色彩が増していく。
雨も徐々に収まり、次は「Milltea」。彼女は幼少期から徐々に両耳の聴力が無くなり、聞こえない音がありながらも振動や視覚など
あらゆる感覚を駆使しして、音を繋いでいくDEAF DJ。ロケーションが織りなすムードを倍増させるような素晴らしいDJingだった。
オーディエンスのバイブスも高まってきたところで世界的ブレイクビーツユニット「HIFANA」のKeizo Machine!へ。
多幸感溢れる昭和歌謡Remixからサイケデリックなワールドミュージックまで自由自在に、フィンガードラミングを駆使したパフォーマンスは唯一無二の
グルーヴを生み、フロアの熱量を一気にあげる。
ラストはこれまでVJも勤めてくれていた工藤真工の独自表現 #SyncWorld へ。
繊細で鮮やかなジャンルフリーのエレクトロニカサウンドと、映像を完全同期させた深い世界へ没入させていく。
たくさんの人が踊った。
たくさんの人が世界を表現した。
聴者もろう者も関係なくみんなで踊りたいと、たくさんの人が集まり
必要なお金を支援し、必要な物を持ってきて、必要な時間を過ごした。
結果的にいうとSONORITYのスピーカーが、遠くにいる難聴者に音を届けることはできなかった。
野外ゆえの音の広がりや、ノイズ、予期せぬ雨天でステージの上に位置を変更したこと、諸々と原因はあるのだが
とりあえず現段階では、ここまで。
ただ、ろうの方がスピーカーに耳をあてて聴いてみたところ、聴こえた、とのこと。
ノイズではないクリアな音楽が、聴こえた、と伝えてくれた。
そして、聴もろうも関係なくみんなで同じ空間にいれることが嬉しいと、そう伝えてくれた。
やってよかったと思った。
日本語、英語、手話、様々なコミュニケーションが行き交う場所で
言葉は混ざり合い、踊りはそれを必要とせず、場はすべてを無にまとめるようだった。
テクノロジーは、見えないものを見ようとする力だ。
聴こえないものを聴こうとする力だ。
これはずっと続いていく。
フェスティバルカルチャーは
だれかを置き去りにすることを望まない。
これもずっと継承されていく。(する)
聴こえない音はいつか必ず聴こえるようになる。
ソーサウンドフェスティバルは、続いていく。
Sooo Sound Festival
あめみや ゆう
Photo by
HyLø.IsE
登坂天成
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不定期にミーティングを開催しみんなで企画して進めていきます。
年齢経験一切不問。
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