コラム

SDGsはだれのため?自利と利他のバランス

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こんにちは。あめみー(@amemi_c5)です。

今回はおおよそ出口のなさそうな「世界」や「自分」についての記事です。
表題にあるように「SDGsはだれのため?」という問いを考えつつ、最後はそれを考えるのにぴったりな場をご紹介して終わります!

(そもそもSDGsってなに?という方はまず下記の「1分でわかるSDGs」をご覧ください!)

http://oxygen-media.net/archives/142

世界を変えるってなんだ

SDGsは「世界を変えるための17の目標」とありますが、世界とはなんでしょう。「Mr.Chirdrenの桜井さん」とかならパッと顔が浮かびますが、世界さんの顔は浮かびません。「世界観」という言葉のように自分の外だけを指す言葉でもなさそうです。更には「パラレルワールド」のように意識外の概念についても世界という言葉は適用されます。ぼくらは世界に生きているとだいたいの人が納得できますが、その実世界の正体は曖昧模糊としています。

SDGsの17のゴールを鑑みるに、人間社会の不平等の緩和と環境保全を中心に掲げられ、人間の観察する地球内の「できごと」をSDGsでは「世界」としているように見受けられます。南方熊楠は「こと」を「もの(物理)」と「こころ」からできていると曼荼羅で表していますが、セカイはこころの数だけ存在するならば「世界を変える」とは一体どういった状態なのでしょう。

(図:南方熊楠曼荼羅)

世界のものさし

その状態に対してのSDGsの解はそれぞれのターゲットを見ていくと理解することができます。例えばSDGs15「陸の豊かさも守ろう」のTarget1には「2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。」とあり、Target2には「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。」と記されています。

その他にも「陸は既に豊かなものだと思おう」といった「こころ」を支点にした変化の記載はなく、当然といえば当然の話ですが169のターゲットほとんどは物理(による世界)に対してコミットがなされています。とはいえ「世界を変える」ことをここまで巨大に定義付けした目標群は凄まじく、SDGsは史上かつてない大きさの世界のものさしとも言えます。

全体最適にぼくらはノレるか

世界(環境や仕組み)の変化の善し悪し(こと)はそれぞれの「セカイ」においてはそれぞれのこころが決めますが、ここで定義されている「世界」の変化に資することは利他的なことなのでしょうか?それとも自利的なものでしょうか?

フロイトは精神過程の基本原理として「快感原則」を説きました。ざっくりいうと人間は「快を求め不快を避ける行動原則がある」というものです。SDGsは全体最適として「世界」の不快(課題)を定義し取りまとめ、快(課題解決後の世界)を示しそれに変換する運動ですが、世界を細分化した際に現れる個人にとって、この変化への運動はノレるものなのでしょうか。

小さな「セカイ」にとって変化とはだいたい不快なものです。朝起きたくなかったり、こたつからでたくなかったり、勉強したくなかったり、変化しないことのほうが楽(快)です。ただ、小さな「セカイ」が大きな「世界」と共鳴すると多くの利他(変化)は自利(快)へと繋がり、自利と利他の境界はそもそもなくなってきます。様々な宗教で利他は推されてますがそれは特別なことではなく、気づいてみれば基本的な行動原理なのかもしれません。

SDGsはだれのため?

とはいえ、自他の間をなくすことは言葉にするが易し、本当に難しいことです。ましてやSDGsのように遠い国々の日本では感じることのない苦難を持った人々に、想像力を伸ばして自分ごととして行動していける人は一握りかもしれません。かつてネイティブアメリカンは7世代あとの先祖のことを考えて、持続可能な生活をしていたと言われていますが、それほど強靭なスピリチュアリティももはや兼ね備えていません。

その代わりにこの時代は物理で繋がりが可視化されています。グローバルという言葉が日常に使われ久しく、もはや国交のない国などありません。日本から馴染みのない遠い国々も、実は日本のメーカーのスマホの原材料の採掘国だったり、スーパーに並ぶあの食品の生産地だったりします。

例えばその国の貧困を解決するために現地に工場をつくり現地人を雇用し生産性を増やすと、分業化が可能になり作業が簡易化し材料コストが下がり、スマホの値段も下がるかもしれません。食品生産地の賃金をあげることで、余裕ができてオーガニックな農法に切り替わり、健康な輸入野菜だけが食べられる日が来るかもしれません。

またESG投資といって、世界のイケてる投資家たちは社会的な責任を果たす企業への投資傾向が高まり、2016年だけで2500兆円の規模にまでなっています。ぼくらは行動と環境によって思考を変化させていきます、自利的にしていた社会的な取り組みが、気づかぬ内に別の動機にすり替わっていることはきっとあるでしょう。

自利と利他のバランスはお寺で学べる

最後に、SDGsに関わる方々はもちろん、こころの軸に悩む方々へおすすめな学びの場が築地本願寺にて開催されるのでご紹介します!

(以下プレスリリースより)
こころの「軸」をつくるための学びの場「スクール・ナーランダ」第3回は東京・築地本願寺にて開催!
脳科学者、音楽家、ロボット開発者、映画監督、そして僧侶。豪華講師陣の授業+築地本願寺ナイトツアーなど充実のプログラム。
僧侶に加え、科学や芸術、哲学など多様な分野の最前線で活躍する講師陣から現代を生き抜く智慧を学ぶ、浄土真宗本願寺派による「スクール・ナーランダ」。第3回は、オリエンタルな外観で知られる築地のランドマーク・築地本願寺にて開催決定です!

テーマ:「わたしのため」と「あなたのため」のバランス
わたしたちは社会の中で他者と共存しながら生きていますが、現代社会における他者との関わり方はさまざまです。自分さえよければという自己中心的で排他的な生き方もあれば、社会の課題に積極的に向き合って社会や他者への貢献に取り組む方たちも増えています。あるいは他者の意向を気にし過ぎて自分を抑え、窮屈に感じている方もいます。

仏教における「仏の慈悲」とは、他者の喜びを自らの喜びとし、他者の苦しみを自らの苦しみとすることと表されます。私たち人間には、完遂することは難しいかもしれませんが、仏教ではできる限り自己中心的な考え方・生き方を超えてゆこうとします。どのように「わたしのため」と「あなたのため」のバランスを取って、社会の中で共存してゆくのか。科学、芸術、仏教、それぞれの知見から学びます。

日 時:2018年3月3日(土)・4日(日) 10:00~18:15
会 場:浄土真宗本願寺派 築地本願寺(東京都中央区築地3-15-1)http://tsukijihongwanji.jp/
講 師:〈3/3〉入來篤史(脳神経科学者)
アン・サリー(音楽家/内科医)
小池秀章 (浄土真宗本願寺派僧侶)
〈3/4〉林 要(ロボット開発者)
三島有紀子(映画監督)
葛野洋明(浄土真宗本願寺派僧侶)
定 員:60名/日
対 象:18歳~29歳
参加費:1日3,000円、2日通し券5,000円(いずれも昼食付き)
申込み方法:申込みフォーム(https://goo.gl/Ng1k6G)、もしくは「浄土真宗本願寺派 子ども・若者ご縁づくり推進室」宛に、メール(goen@hongwanji.or.jp)かFAX(075-351-1211)にて、住所、氏名、年齢、希望日、メールアドレス(今後の連絡はメールアドレスへご連絡いたします)、緊急連絡先電話番号を記載してお申込みください。参加費は当日受付にてお支払いください。
※申込み締め切り:2018年2月25日(日)
先着順。定員になり次第、締め切りといたします。
主 催:浄土真宗本願寺派 子ども・若者ご縁づくり推進室
共 催:浄土真宗本願寺派東京教区教務所
協 力:築地本願寺
企画・運営:(有)エピファニーワークス

昨年開催された際に取材させていただいたレポート記事はこちら!第一回目のテーマは「わけへだてと共感」。

実際に参加して味わってきたとびきりおすすめのイベントです。学者、アーティスト、宗教家による鼎談は多角的な視野を獲得しつつもどこか普遍的な文脈の在りかを示唆してくれる、非常に「セカイ」を感じることができる場です。本願寺という舞台も素晴らしく、凛とした空気感が思考を研ぎすませます。

似たような感覚や意識を持つ同年代とのご縁が繋がる場所になるかも。詳細、続報はこちらから!

あめみー

あめみー

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92年生まれの水瓶座。Ozone合同会社代表/Oxygen編集長/DJ。
ソーシャルフェス®といってSDGsが終わったあとの世界をフェスにする活動してます。無音のフェス「サイレントフェス™」や量子力学的フェス「Quantum」などなど全国各地でプロデュース。猫背。歯医者が怖い。

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