こんにちは。あめみや(amemi_c5)です。
ぼくは暇なことに「戦わないかくめい」ってどうすればできるだろうとよく考えるわけですが、直感的な幸福論と社会構造のひずみをなるべく早くそして穏やかに着地させていくには、やっぱり「変える」より「つくる」のほうが楽だし優しいなぁと思うわけです。そんな想いからいろんなソーシャルフェス®をつくってきたわけですが、奥田くんのFacebookから流れてきた「THE M/ALL」という企画はまさにそんな意思を同じくしているなぁと感じて、久しぶりに再会し取材をさせてもらいました。「SEALDs」や「ReDEMOS」など積極的な市民活動を展開する彼の背景にある「HIP HOP」という哲学。世界を捉える現実的な意思。そしてこの「THE M/ALL」というフェスの面白さをたっぷりお届けできればと思います!
奥田愛基(@aki21st)
1992年、福岡県北九州市生まれ。2011年、明治学院大学国際学部に進学後、2013年、東日本大震災をテーマにした短編ドキュメンタリー「生きる312」で国際平和映像祭グランプリを受賞。同年12月、10代から20代の大学生を中心としたグループ「SASPL(サスプル:特定秘密保護法に反対する学生有志の会)を友人らと創設。その後2015年5月、SEALDs(シールズ:自由と民主主義のための学生緊急行動)を創設。同年夏、安全保障関連法案に反対する国会前抗議を毎週金曜日夜に主宰し、大きな注目を集める。2016年春、大学を卒業後、現在大学院修士課程に在籍。『変える』(河出書房新社)の他、共著に『民主主義ってなんだ?』など。
・奥田愛基の音楽
ーー今日はよろしくお願いします!まずは奥田くんがフェスをつくるにあたっての音楽的な原点、どんな音楽やどんなフェスが好きなのかということについて伺いたいです。
小中からHIPHOPが好きでした。自分の思うところをストレートに表現しているところとか、どこで生まれたかみたいな背景を表現してたりとか、そういうところが好きです。ここ数年はテクノとかハウスとかの反復する気持ち良さがわかってきて、DJの上手い下手もロングセットを聴きはじめてわかるようになってきた(笑)SEALDs終わって落ち込んだ時期があったんですけど、そこではテクノとかずっと聞いてた。なんとも言えない救われてる感じがありました。
ーーアーティストだと誰がすきですか?
好きなアーティストはたくさんいるんですけどHIPHOPだとKendrick Lamarが一番すごいと思う。彼がすごいのは明確に社会に訴えをだしていて楽曲は社会運動のアンセムみたいになっているんですけど、個人としては政治性とは少し違う部分で悩みがあって。
例えば「u」っていう曲のなかで「Loving you is complicated(お前を愛することは複雑だ)」ってずっと言ってて、PVだと鏡、つまり自分を見てそう言ってたり、彼が売れて有名になったときも個人とアーティストとしてのジレンマを歌ってたりして。HIPHOPがメジャーになってしまった時代に、単純に社会的な正義に対して「こっちだ」って言うんじゃなくて、本当にそれがいいかわからない葛藤のなかで表現を続けている、そこを横断的にやるのがアートの領域だなって思います。そこの複雑さに耐えて、それでも歌うのがすごい。
・カルチャーは土壌。みんながいろんなものをつくれるように。
ーーM/ALLについて詳しく伺っていきたいのですが簡単にいうとこれはどんなフェスといえますか?
基本的には音楽フェスで「WWW」「 WWWβ」「 WWW X」でメインステージがあって、付随して30時間トークがあって、ライズビルをほとんど貸し切ってやってます。コンセプトとしては楽しいんだけど楽しくない、みたいなところがあって、楽しいだけでもいいんだけどもっとうまく社会と繋げられないかなと。
エンターテイメント的にはライブとトークとフードコートを自由に回遊して楽しむもいいし、途中で抜けて渋谷で遊んでもいいし。ショッピングモール的な自由な楽しみ方をしてもらえればなぁと。音はロックもヒップホップもテクノもあってオールジャンルです。
今回「カルチャー」ってことをテーマにしていて、カルチャーってなんだろうって考えていて、日本語で言うと文化だけど文化っていうと固すぎて、社会的な背景と地続きにある何かだろうなぁって思います。語源を調べると「耕す」って意味があって、土壌のことを言ってるんですよ。そこからいろんな農作物がでてくる。そう考えると日本のカルチャーって表面的でいろんなものが育つ土壌がないなぁと。
まぁぼくはそんなこと無視して、コンクリートの割れ目から生えてくる雑草みたいのが好きだったりするんですけど(笑)。自分も北九州のコンクリートの割れ目から出てきたと思うし。でもそういうのが好きだっていってても仕方ないので、土は土で大事だなと。ぼくがこんなことしなくても勝手にいいものは育つと思うんですけど、誰かが見える形でつくっていかなきゃなと。共有したいのはみんながいろんなものを育てられる土壌をつくりたいってことです。
ーー多様な人が30時間も多角的に話を続けているときっとそこに普遍的なキーワードや文脈みたいなものが見えてくる気がして、それが今のカルチャー(土壌)と呼べる言語になるのかもしれませんね。
音楽とかも何回も再現していくし言葉も誰かが使った言葉をまた誰かが使っていて、その営みのことをカルチャーって呼ぶと思うし、そういった流れは意識していきたいなと思います。カルチャーをつくるうえで一番大切なのはそれをつくろうとする態度で、もちろんこの1回のイベントで何かがつくれるとは思ってないですけど、例えばショッピングモールって中の店舗が売れるか売れないかの基準以外で存在している正当性ってほとんどなくて、カルチャーの対極にあると思います。
それに対抗してM/ALLはカルチャーのモールをつくります。入ってるものはかなり雑多なんだけどMAKE ALLしてる。東北行ったときに津波でイオンがビショビショになってコンクリートの建物だけが残っているのを見て、その後そのなかに病院とかこれまでにないものが入ったりしてて、世界はこうやって再利用されてくんだろうなって思いました。だからこっちとしてはそれをなんでも使ってやろうという態度です(笑)

クラウドファンディング限定Tシャツ
今回のメインビジュアル(上記のTシャツのグラフィック)も世界中の色んな建物をコラージュしていて、バベルの塔は神にも届くように高くつくって、最後は壊されちゃうわけですけど、つくるって本当にいいことかっていうのも問いたくて、いいものかどうかってつくってみないとわからないし、そういう葛藤はありつつも、それでもつくりたい。
ーーさっき紹介してもらったケンドリックラマーの複雑性に耐えてそれでも歌うって信念に近いところがありますね。
このTシャツに「MAKE A PLANET. GREAT AGAIN」って書いてあって、完全にトランプのあの言葉のパロディなんだけどあいつの馬鹿さ加減に負けちゃいけないなって思うし、それに呆れかえって萎縮したらだめで、そっちはアメリカならこっちは地球?ってことで態度だけは負けないようにと。HIPHOPってセルフボーディングしてなんぼなところもあるから(笑)
モール・ラッツとつくるフェス
ーークラファンのページに記載されていた「多くの社会問題を抱える時代にこそ、未来をつくる想像力が必要。 カルチャーを育てることは、新しい時代を開く原動力になります。」に共感するんですけどそのための具体的な手段としてMALLではどういったデザインをしているのですか?
このフェス自体には世界を抜本的に解決するような策はなくて、そうじゃなくて1人1人が消費していっている言葉やものを注意深くみていこうよと伝えています。そういう思いをもったアーティストをブッキングしているし、できる限り深読みしてほしいです。
意味を描いたZINEを配ったりはするけど、こうなったら理想だと思うのは、仕掛けとかあんまりつくらなくて本来だったら自分たちで考えて自主的ににそうなってほしい。ライブやトークをみながら「自分たちもこういうことやってみたいな」って思ってもらえればいいなと。「この空間を共有しよう」ってことが伝わったら大成功。
クラウドファンディングが成功したら無料になるから、なるべくたくさんの友達を連れてきてほしいです。フェスって高いから、遊びたくてもお金ないなぁっていう若い人がいたら遊び場に、溜まり場にしてほしいなぁと思います。
自分にとってのショッピングモールはなんもなくても友達といってただ過ごすだけの場で、自販機で買ったお茶で2時間くらい粘るとかしてた(笑)
ショッピングモールにたまってる若者を英語のスラングだとモール・ラッツ(mallrats)っていうらしくて、それ聞いたとき結構テンションあがってモールラッツでしょおれらって(笑)。いうてもフェスってお客さんと一緒に育つところあるじゃないですか。
ーーそうですね、コミュニティと共にカルチャーがつくられていくというか。
なのでこれからお客さんがどういうカルチャーをつくってくれるのか楽しみです。
ーーモール・ラッツがMake allしていく先にM/ALLのカルチャーが自然とでてくるわけですね。ちなみに最初のフェスづくりで大変なのがお金のとこと運営メンバーを集めるとこかなって思うんですけど今回の運営メンバーはどうやって集まったんですか?
みんな音楽好きな人ばっかりなんですけど、今のままじゃ物足りないっていう人が集まっていて、SEALDsからの流れってわけじゃなくて、世代もばらばらで映像つくってる人もいるしライターの人もいる。この人とやれたら面白いなっていう人に声かけててマジでみんな手弁当でやってくれています。
すでに一緒に生きてるじゃん、おれら。
ーー奥田くん的にこの時代の「フェスティバル」の効果や役割にはどういったものがあると考えますか?
今って色々と分断されていると思っていて、音楽も社会と分断されていて、楽しい、盛り上がるっていうことだけが切り離されてフェスとされているけど、フェスってそもそも祭りでもっとライフスタイルと紐付いていたり、土着的な信仰があったりすると思います。フェスの役割は楽しいことと、社会と結びつけることとある。儲かる、儲からないでは切り離せない何かがあると思います。
資本主義経済で考えると音楽すらも「このアーティストで人来るの?」ってとこだけ計られてしまったりしますけど、そうじゃなくてその音自体に価値があって「この音で踊れるんです」っていう。そういうことを見逃すと社会から豊かさは少なくなっていくと思う。
社会と繋がるっていうとこで僕が強く意識したいのは「なんでこんな社会なの?」って疑いをもつこと。まだうまい言葉が見つからないけど今回でいうと「Make all」すること。その中で「すでに一緒に生きてるじゃん俺ら」って感覚を共有できればなぁと。

オリジナルTシャツのバックプリント
ーークラファンページに記載されている「この社会をいまより少しでもマシなものにするために」という言葉にとっても現実的な意思を感じました。普通の市民が少しでもマシな社会をつくっていくためにミレニアル世代と呼ばれるぼくらにとって、どういったアクションができると考えますか?
まずは自分たちがスタンダートと思ってることに関して麻痺しないこと。おかしいと思って大丈夫だよって言いたいし、いろんな価値観をもった人がちゃんといるから、自分が良いと思うことを発信しつづけて繋がっていってほしいです。絶対1人じゃない。やり方は無限大だし、とにかく消費されないでほしい。ミレニアル世代ってすげーマーケティングのターゲットにされていて、企画書を見るとインスタ映えさせておけばOKみたいな(笑)
ーー社会の正しさらしきものじゃない直感的な善に基づいて堂々と文化をつくっていきたいですね。にしてもインスタ映えの一言でプロモーションが片付けられてしまうほどバカじゃないですよね(笑)
そうだよね、バカにされてると思う(笑)
当たり前のことを当たり前にやるだけ
ーー最後になんですけど、このメディアは「SDGs」っていう持続可能な開発のための目標を1つの指針にして”そうぞう機会の最大化”を1つの役割として持てればなぁと運営していて、SDGsについて奥田くん自身はどういう印象を持ちますか?
ぼくはやっぱSDGsのあの画像(上記の画像)を見たときに「なんて当たり前なんだろう」って思ったし、こんな当たり前のことを掲げなくてはいけないほど社会って病んでるんだなって思う(笑)。こんなのやってどうするのっていう人もいるかもしれないけど、当たり前なことは当たり前にやっていきたいと思うし、応援してます。スタンダードをみんなでつくっていきましょ。保守革新とかどうでもよくて、この社会が持続していくためにはやらなくちゃいけないし、社会がなくなればみんな死んじゃうんだから(笑)
ーー地球なくなったらみんな困るでしょ、ならやろうよくらいな感じですよね。ありがとうございました!
THE M/ALL
2018年5月26日(土)
OPEN 15:00 / START 16:00
<会場>
渋谷ライズビル
WWW / WWW X / WWWβ<GALLERY X BY PARCO>
2018年5月26日(土)~5月27日(日)
OPEN 15:00 / START 16:00
【出演者】
・コムアイ
・BudaMunk
・MOMENT JOON
・odd eyes
・行松陽介
・1017 Muney
・Gotch
・Awich
・田我流
・Yellow Fang
・テンテンコ
・Maika Loubté
・Bullsxxt
<GALLERY X BY PARCO>
・中川えりな(Making-Love Club)
・野村由芽(She is)
・桑原亮子(NeoL)
・haru.(HIGH(er) magazine )
・村田実莉(アーティスト)
・ヌケメ(ファッションデザイナー/アーティスト)
・歌代ニーナ(マルチクリエイター)
・JUN(Be inspired!)
・UMMMI.(映像作家)
・五野井郁夫(国際政治学者)
・奥田愛基(😉)
クラウドファンディングページはこちら!
■書籍紹介
「変える」
「民主主義ってなんだ?」